千葉県の看護系学校で、1年生のうち4割にあたる15人が退学したニュースが報じられました。
統計上看護大学・専門学校の退学率はおおよそ1割前後とされており、1学年で4割の学生が退学するのは、非常に多いです。
なぜ、15人もの看護学生が退学する事態となったのでしょうか。
今回の報道では、教員によるパワハラが問題視されています。
そもそも看護学生が退学する理由は、パワハラだけではありません。
この記事では、看護学生が退学する理由と、今後の対策について考えたいと思います。
看護学生が退学する理由4つ
- 勉強についていけない
1年生は座学がメインになります。
朝から夕方までみっちりと授業があり、学生は学んでいきます。
学習内容は身体の構造機能や統計学など、幅広く網羅的に行っていきます。
追試験に受かることができなかったり、そもそも出席単位が不足している学生は、2年生になることができません。
筆者の友人は、どうしても朝起きることができずに1限の授業に出られず、留年した人がいます。
また、追試験に受かることができずに必修単位を落としてしまい留年した人もいます。
座学の壁は高いです。
- 人間関係に悩む
看護系の単科大学、専門学校では、一学年の学生の数がそのままクラス単位になります。
小学校や中学校のように30人~100人の学生が、卒業まで同じクラスで過ごすことになります。
今回問題となった看護系学校は1学年で38人が在籍していたので、そのまま学年が上がれば3,4年間をともに過ごすはずでした。
当然のことですが、皆顔見知りになります。
看護師は、未だに男女比1~2:9で女性の方が多いですから、女社会で人間関係を築く必要があります。
卒業までの数年間で大変な学業や実習をともに過ごすことで、深まる仲もあれば、修復不可能なほど壊れる関係もあります。
そこで人間関係に嫌気がさしたり、心を病んでしまう人は、辞めてしまうこともあります。
また、学生同士のみでなく、このニュースのように教員との関わりがうまくいかないケースもあります。
大学の場合、教授は研究が本分であり、学生とのコミュニケーションが上手でない人もいるためです。
また、教員が、医療者として必要な心構えを教育する際に、指導が厳しくなることはあります。
ただし、どのような教員であっても学生に対して「あなたは看護師に向いていない」等の人の未来を決めつけるような発言は、あってはなりません。
- 看護学実習についていけない
退学する学生の多くは、看護学実習が原因となる印象です。
看護学実習は、とにかくきついからです。
慣れない病棟に行き、環境に順応しながら、患者の看護を考えます。
毎日緊張しながら患者と関わり、看護記録を書き、教員から指導を受けます。
人との関わりであるためマニュアルがなく、個々の個別性に沿った看護というのは、働く看護師ですラ難しいものです。
それを看護学生が限られた期間でできるようになるためには、かなり努力が必要です。
たいていは病棟や患者さんに慣れてきたころに、次の実習に移っていきます。
環境の変化や多岐にわたる学習に適応できるかどうかが、課題となります。
実習中は、教員のフォローはとても重要となります。
厳しいなかにも看護師に導く力と心を支える力が求められているのです。
- 看護師になりたくない
学生のなかには、看護師を志していない人が入学することがあります。
たとえば私の知人は、医師を目指していたものの、滑り止めで受けた看護大学に入学していました。
学習を進めるうちに、やはり看護師になるのは違う、と感じて辞めていきます。
他の職業になりたい気持ちのまま学習を続けるには、簡単な内容でもありません。
個人的には、早めに見切りをつけられた方が良いと思っています。
退学する学生を救済する対策3つ
辞めてしまう学生は、志したはずの看護の道に迷います。
そこで、悩みを抱えた学生を支える役割が大切となります。
私見にはなりますが、もっと手厚くなれば良いと考える対策について説明します。
- 担任教員
1つの学年に1人は配置される役割の教員です。
教科によって教える教員が変わるので、義務教育と異なりあまり関わる機会はありません。
しかし、悩みをもった学生が心の寄りどころとなる人を探す時、担任教員は最も身近な存在となります。
担任教員が学生に寄り添うことができれば、1人で悩む学生が減っていくはずです。
- チューター制度
1人の教員に対し5,6人くらいの学生が担任しグループとなるコミュニティです。
筆者の通う学校でもありましたが、ほとんど機能していませんでした。
せっかく少人数でコミュニティがあるのですから、関係を深めて情報交換をする場にしたり、教員に相談できる場となれば良いのになと思っています。
- 教員の評価制度
看護学校は、適正な教育が行える組織である必要があります。
そのひとつとして、教員の評価制度があっても良いと思います。
教員が適正な教育が行えているか否か、客観的に評価する指標が必要です。
評価制度が既存の場合は、15人の学生が退学せざるを得ない状況を作った原因を探索し、改善の余地があるか検証する必要があるかと思います。
まとめ:病棟の看護師としてできること
今回のニュースでは、退学した複数人がパワハラを訴えているそうです。
もし訴えが本当であれば、指導が厳しい以上に、何らかの問題があったのではないかと思います。
今回の出来事で、筆者のような病棟看護師が力になれることはあまりないかもしれません。
ただ、看護教育の場が少しでも良くなってほしいという気持ちは強くあります。
最近では、看護学生が実習をしやすい環境をつくろうと積極的に取り組んでいる病院も多いです。
筆者が臨床教員として指導させてもらう時には、より良い看護ができるように、また学びを次に生かせるように一緒に看護を考えたいと思っています。
看護学生はきつい経験も多いですが、応援している看護師がいることを知り、乗り越えてくれるとうれしいです。
せっかく看護師を目指してくれていた学生が15人も失われてしまったことが、残念でなりません。
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